妻が私と結婚する際、亡き義父にこう言われたそうです。
「あの男は野武士ぞ。なんも持たん。あの男と結婚するなら、あの男と一緒に野で死ぬ覚悟と、あの男と本懐を遂げ畳の上で死ねるようになる覚悟。二つの覚悟を持って一緒になれ。」

経営者であった義父は、人生にも経営にも、こんなふうに腹を括った言葉と行動で道を開いていた人でした。

その義父が、果たせずに亡くなってしまった夢が一つだけありました。
「自社ブランドを持ちたい」という夢です。

義父のもとでこの仕事を始めて、ともに過ごした時間はたったの五年。
義父の死により、突然経営のバトンを渡され、暗中模索、七転八倒、心配不安の連続です。目の前の仕事をこなすだけで精一杯の日々でした。
たくさんの人々の支えの中、20年以上の時が過ぎ、今では経験の積み重ねの分少しだけ、ものごとの乗り越え方も解るようになってきました。

自分が経営者となり、経験を積んだことで、私の心の中にも義父と同じ想い「自社ブランドを持ちたい」という願望が目覚めていくのを、ここ数年感じていた中でのコロナ禍。日に日に減っていく受注の仕事。
苦労させるばかりで、長年弊社のために尽くしてくれた仲間達の手を離して生き残った罪悪感。

このまま願うばかりでは、取引先の都合でまた社内スタッフの生活を一変させてしまうことがあるかもしれない。
ならば、しっかりとした自社ブランドを確立し自立の道へと進むために行動を起こそう。亡き義父の夢と私の願望が重なりました。

行動を始めた私の周りにいろんな人との出会いが始まりました。

エイチ・コンサルティング 川崎英樹さん
「NIHIL」 古賀幸仁さん
ECサイト制作のドメさん
コピーライター ゲムちゃん
カメラマン Nさん
ロゴデザインの若きデザイナー Nくん
神埼市商工会 Yさん
佐賀県知財総合支援窓口 Iさん
佐賀県工業技術センター Kさん
すご腕弁理士 Yさん
古くからの戦友(株)フットテクノ 社長とOさん
(株)サガシキ KさんとYさん
佐賀県地域活性化雇用創造プロジェクト Yさん
佐賀県プロフェッショナル人材戦略拠点 Yさん

その他、沢山の方に手を差しのべて頂きました。

弊社の全てのスタッフとのリアル版「陸王」のような時を経て、ひとつのルームシューズが生まれました。
関わっていただいた全ての方々の恩恵と弊社のスタッフ達の熱意、誰一人、どれひとつ欠いても「カサネス」の誕生はなかったと思います。

「カサネス」というブランド名は、先代社長、古賀重義の果たせなかった夢への想いを受け継ぎ、氏名の中の「重」という字をもらいました。

妻の名前、「薫」の中にも「重」の字があります。
「薫の人生の上も下もお父さんに勝り、先も後ろもお父さんが守る」という親の祈りを込めた名前とききました。

時を重ね、人と自然への調和を重ね、未来への夢を重ねる。
私達カサネス製作者は、そんな想いを込めて日常のシーンの中で、安らぎと高揚感を提供するルームシューズを製作することをお約束いたします。

まずは「カサネス」というブランドに興味を持っていただければ幸いです。

感謝

令和4年12月
南田産業株式会社
代表取締役社長 長谷 剛